南魚沼産コシヒカリ

コシヒカリ博士はロマンチストだった

塩沢エリアには、「コシヒカリ博士」と呼ばれる、ちょっとした有名人がいます。JAしおざわ米穀課の種村課長です。第一印象からは、物静かで、無口な技術者を思わせる種村課長ですが、コシヒカリについて話が及ぶと一変します。目が爛々と輝き、少年のように純粋で熱く語る姿にしばし心を奪われました。

― コシヒカリを導入する以前に、その下地は出来ていました

■コシヒカリは、毎年、高い評価を得ていますね

種村課長 >> 魚沼コシヒカリは、日本穀物検定協会の食味ランキングでも特Aで、ランキング制度が発足した平成元年以来、特Aより下のランクに位置付けられたことはありません。魚沼コシヒカリが評価される大きな理由として、味にバラツキがないことがあげられます。各農家から収穫された米は、全て食味調査を行います。その結果を各農家に知らせると共に、指導をさせて頂いてます。

■コシヒカリの誕生秘話については、多くの報道機関で報じられていますね。最近、放映されたNHKの「プロジェクトX」でも、大きな反響があったようです。旧塩沢町がコシヒカリを導入した際、農家の方々の反応はいかがでしたか

種村課長 >> もともと、この辺りは、農業が盛んでした。コシヒカリと命名される以前ですから、昭和31年以前、まだ、越南17号と呼ばれていた頃から、熱心な農家の方は、その穂を農業試験場から持ち帰り、各自で栽培していました。コシヒカリとして世に出る、ずっと以前から、魚沼で栽培されていましたよ。ですから、ごく自然といいますか、コシヒカリを公に導入する以前に、その下地は出来ていました。

― 塩沢エリアでは、どのような米を作っても、おいしくなるんですよ

■塩沢エリアは、コシヒカリの栽培に適していたようですね。

種村課長 >> 新潟県がコシヒカリを奨励品種に指定する前、県内各地でコシヒカリが、その地で栽培に適しているか、否かを調査する、原種決定試験を行っています。その結果、魚沼地域はコシヒカリの栽培に、非常に適していることが分かったのです。塩沢には、うまい米をつくる上で、最良の自然環境がそろっています。その上、高い農業技術がある。ここ塩沢では、どのような米を作っても、おいしくなるんですよ。他では真似が出来ない味になるのです。米作りに欠かせない条件が備わっています。

■えっ!? コシヒカリ以外の品種でも…ですか?

種村課長 >> 塩沢は、米を栽培する最良の温度条件です。美味しい米をつくる基本は温度だと思います。最も大切なことは、米の穂が出て、それが実るまでの温度です。これは、高すぎても、低くてもダメ。いずれの場合も味は落ちます。米が実る温度が、塩沢の気温と一致している。だから、コシヒカリに限らず、どのような品種を栽培しても、うまい米が出来るのです。

― 塩沢はうまい米をつくるんだ

■もともと、旧塩沢町の農業技術は高いと伺いましたが。

種村課長 >> そうです。かつて、コシヒカリがつくられる以前、旧塩沢町の大沢地区で生産されるもち米は日本一の品質を誇っていました。当時から、優れた農家が多かったのでしょう。

■今や、塩沢ではコシヒカリは、当たり前のように作られているようですが、これまでの過程で、自主流通米制度が大きな転機でしたね

種村課長 >> そうです。昭和40年代後半ですね。それまで米の価格は、産地や品種に関わらず一律でした。ですから、この辺りの農家も、量は獲れるがうまくない米を出荷用として、美味しいコシヒカリは農家が自分の家で食べるために栽培されていました。そして、自主流通米制度が始まった頃は、米の卸(おろし)業者の中でも、コシヒカリの評価は高かった背景もありまして、どうせ、米を作るのであれば、収穫量が少なくても、高く売れるコシヒカリの作付けを増やす方針に転換しようと。それからは、「塩沢はうまい米をつくるんだ」という、意識が高まり、以来、栽培技術の開発も進み、当時に比べ、収量も随分良くなりました。現在、塩沢で生産されている米は、ほとんどがコシヒカリです。

― 環境にやさしい農業。これを進めていかないと

■今後の目標、夢について、お話頂けますか。

種村課長 >> 最近は、無農薬や有機栽培などが脚光を浴びていますが、これらはコストがかかり、当然、価格に反映されます。昨今の不況で、高い米は売れません。しかし、これからは、自然にやさしい、有機を使った米づくりを考えていきたいですね。うまい米を作り出す塩沢の自然は何よりの財産です。

■段階的に進めていらっしゃるのですか

種村課長 >> 新潟県でも取り組んでいます。環境にやさしい農業。これを進めていかないと生き残れない時代です。しかし、部分的な地域だけで、有機栽培や無農薬・減農薬にしても、意味がありません。水も土壌も循環しているのですから。今後は、広い地域で取り組むべき課題でしょうね。

≪補足≫
種村課長は平成21年6月しおざわ農業協同組合組合長に就任しました。

 
 
 

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